2026-09-11

AWS のプロダクト史、そしてなぜ第7位なのか

2025年、AWS の売上高は1287億2500万ドルだった。Amazon の通期総売上7169億2400万ドルの18%にあたる。

同じ年、AWS は456億600万ドルの営業利益を出している。Amazon 全社のその年の営業利益は799億7500万ドル——売上の18%を占める部門が、利益の57%を占めた。数字はいずれも Amazon が2026年2月5日に提出した10-K による。

ランキングで AWS は第7位、総合94.05。独創性97は六項目のうち最も高い。

最初に売ったものは、1時間10セントだった

2006年3月14日、Amazon S3 が公開された。価格は当日の告知に書かれている。1GB を1か月保存して15セント、出入りするデータは1GB あたり20セント。

同年8月25日、EC2 がベータ公開された。「仮想 CPU」1個分の構成は、1.7GHz 相当の Xeon プロセッサ、メモリ1.75GB、ローカルディスク160GB、ネットワーク帯域250Mb/秒。価格は1クロックアワーあたり10セントである。

この価格の意味は安さではない。2006年にウェブサイトを立ち上げるなら、最初の作業はピーク時のトラフィックを見積もることで、次にそのピークに合わせてサーバーを買い、データセンターに預け、1年分を払う。この金は、その商売が成立するかどうかを知る前に払い終えていなければならない。

EC2 はこの工程を削除した。安くしたのではない。時間単位で買えて時間単位で止められるものに変えたのである。

AWS の年表:2006年3月14日 S3 公開、1GB あたり月15セント。2006年8月25日 EC2 ベータ、1時間10セント。2025年 AWS 売上高1287億2500万ドル、営業利益456億600万ドルで Amazon 全社の57%。2025年 設備投資964億9600万ドル

独創性97:このカテゴリーは本当に存在しなかった

上位10製品で独創性が AWS より高いのは二つだけだ。iPhone 99、標準コンテナ98。

技術的に他社ができないことをやったからではない。仮想化も分散ストレージも従量課金も、一つずつ取り出せば2006年に新しいものは何もない。

新しかったのはそれらをクレジットカードで買える一つの商品に束ねたことだ。それ以前、「計算能力」は資本支出であり、起案し、承認を取り、減価償却する対象だった。それ以後は、API 呼び出し1行と月次の請求書になった。

同じランキングの Amazon ストアと並べるとはっきりする。Amazon ストアの独創性は90で、上位8製品のなかで最低だ。ネットで本を売ることは1992年から誰かがやっていたからである。AWS は違う。公開されたその日、時間単位で計算資源を貸す会社は他になかった。

「機械を買う」を、利用者の帳簿から自社の帳簿へ移した

2025年、AWS 部門の固定資産の増加額は964億9600万ドルだった。

この数字は並べて見ると重みが出る。2023年は248億4300万ドル、2024年は532億6700万ドル。3年で4倍近い。 同時期の年間売上高は1287億2500万ドル——つまり AWS が1年のあいだに機械を買いデータセンターを建てる金は、1年の売上の4分の3に相当する。

スタートアップが節約した前払いの投資は、消えたわけではない。発生する場所が変わっただけだ。AWS の商売とはその金を全員の代わりに立て替え、時間単位で回収することである。

事業98はここから来ている。そして模倣が難しいのもここだ。このビジネスモデルを写すには、まず1年に1000億ドル近くを投じられる体力と、その金の回収に数年かかることに耐える体力が要る。

体験85:上位10製品で下から二番目

この項目で AWS より低いのは標準コンテナの80だけである。

S3 で最も有名な数字は「イレブンナイン」の耐久性だ。AWS のドキュメントの原文は designed to provide 99.999999999% durability and 99.99% availability of objects over a given year ——「designed to provide」は設計目標であって、約束ではない。サービス品質保証に書き込まれ、金を払って補償される数字のほうは99.99%の可用性であり、イレブンナインではない。

この区別はマーケティングではほぼ必ず消される。そしてそれこそが AWS を使う日常の感触だ。どれが設計目標で、どれが補償を伴う契約上の義務なのかを、自分で見分けなければならない。

コンソールも同じである。登録したばかりの人が AWS のコンソールを開くと、一画面ぶんのサービス名が並んでいて、名前から何をするものか分かるものが一つもない。請求はさらに技能の領域だ。時間単位、リクエスト数単位、外向き通信量単位で別々に課金され、同じことに三つ四つの支払い方があり、会社にはこれを専門に見る人間が要る。

あるプロダクトが「プロの利用者に仕事を成立させる」点で極致に達しながら、「一人で理解し切る」点でひどく劣ることは両立する。 このランキングではその二つを分けて数えなければならない。

規模92:上位10製品で唯一95を下回る

上位10製品の残り9つは、規模がいずれも95以上だ。92は AWS だけである。

AWS 自身の公式表現は「millions of customers」——百万単位の顧客だ。一方このランキングの上位が相手にしているのは十数億人である。iPhone、Google 検索、コカ・コーラ、WeChat。使っているのは普通の人だ。

AWS の利用者は最初から全員ではなく、本来ならまずサーバーを買わねばならなかった人たちだ。 届いている先は業界であって、人口ではない。どれだけ多くのサイトを支えていようと、この項目では不利になる。

なぜ7位で、それ以上ではないのか

AWS の六次元評価:事業98、独創性97、影響97、持続95、規模92、体験85。総合94.05で第7位。標準コンテナの独創性98・体験80と対照

上は第6位の Amazon ストア(94.20)、下は第8位のマクドナルドのファストフードシステム(93.75)。三者の差はいずれも0.5点以内である。

AWS を留めているのは規模92と体験85の二つで、この二つは同じことの表と裏だ。これはインフラであって、消費財ではない。

ランキングで AWS に最も似ているのは、同じ会社の Amazon ストアではなく第10位の標準コンテナである。二つの点数の形はほぼ同じだ。独創性は全体でも上位3つに入り(コンテナ98、AWS 97)、体験は上位10製品で下位に沈む(コンテナ80、AWS 85)。

理由も同じである。コンテナは誰か一人の生活を使いやすくしたわけではない。1トンの荷物を運ぶコストを一桁落としただけで、そのあとに世界貿易の形が変わった。AWS がやったのは同じことだ。誰のソフトウェアも使いやすくしていない。「ソフトウェアを作り始める」コストを一桁落としたのである。

インフラの宿命は、成功するほど使っている側がその存在を感じなくなることだ。 そしてこのランキングには「使っていてどう感じるか」を量る項目が一つある。インフラはそこで高得点を取れない。

次元根拠
独創性97六項目で最高。2006年に EC2 が公開された時点で、時間単位で計算資源を貸す会社は他になかった。上位10製品で上回るのは iPhone 99 と標準コンテナ98だけ
規模92六項目で二番目に低く、上位10製品では唯一95を下回る。公式表現は「millions of customers」で、利用者は開発者と企業であって十億人規模の人口ではない
影響97この20年のインターネットサービスの大半は、時間単位で借りた機械の上で育った。「まずサーバーを買う」という前提条件が業界全体から削除された
体験85六項目で最低。サービス名から用途が読み取れず、請求は専任の担当を必要とする。最も有名な「イレブンナイン」でさえ設計目標であって SLA の約束ではない
事業982025年の売上高1287億2500万ドル、営業利益456億600万ドルで Amazon 全社の利益の57%。同年の固定資産の増加額964億9600万ドルという敷居そのものが堀になっている
持続952006年の公開から20年。同時期に始まったクラウドサービスの大半はすでに退場したが、いまもこのカテゴリーの既定の選択肢である

加重すると94.05、第7位である。


採点方法はランキングページに全部書いてある。六つの次元を各0〜99点、加重して総合点、降順で並べる。すべての次元の採点と順位付けは Claude(AI)が行っている——次元・重み・収録基準は私が決め、Claude が独立に採点し、長文を書いたあとに戻って微調整する。

本稿の財務数値は Amazon が2026年2月5日に提出した2025会計年度の10-K(セグメント情報の部分)による。価格と技術仕様は AWS 公式ブログの2006年の二本の公開告知、および AWS 公式ドキュメントによる。これを作った人物は『世界を変えた100人のプロダクトマネージャー』の第2位で、別稿で扱っている。

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