2026-07-06

コメント欄でリクエストされたので作りました:無料ソフト SoloPic

前の記事『なぜ私は 100 個のフリーソフトを作り直すのか』の末尾でこう聞いた。「あなたが毎日使っているフリーソフトの中で、一番誰かに作り直してほしいのはどれですか?」

あれは社交辞令ではなかった。本当に知りたかった。

するとコメント欄に一件の投稿が来た。天津の読者、ハンドルネームは阿祥。「がんばれ」とも「応援してます」とも書かなかった。彼はいきなり要望リストを並べてきた。

一つのコメント、多くの要件定義書より具体的だった

彼の言葉をそのまま引用する。一字も変えていない。

無料の画像処理ソフトがあると助かります。要望をいくつか言いますね。一つ目は、一括トリミングができること。たとえば複数の画像を「左から 100px、下から 57px 切る」という処理がしたい。二つ目は、一括リネームができること。1.png、a.png といった画像があって、「1.png,張三.png(改行)a.png,李四.png(改行)……」という対応表ファイルを用意したら、欻一下(シュッと一発で) 全部の名前が変わる感じ。三つ目は、明るさや対比を一括調整できること。とりあえず思いついたのはこんな感じです。

このコメントを見てほしい。空っぽではない。「もっと使いやすい画像ツールを作ってほしい」みたいな、正しいだけで何も言っていない言葉は一語もない。彼が出してきたのは、そのまま作業に入れる三つの具体的な場面だ

私はこう返した。「了解です、核心は一括処理ですね。」

彼は「そうです」と答えた。

たった一往復。ソフトの要件が決まった。

なぜすぐに「これを作ろう」と分かったか

阿祥のコメントが、前の記事で書いた「フリーソフトの三層の痛み」にまるごとはまっていたからだ。

「無料 画像 一括処理」と検索すると何が出てくるか。広告を出す、「一括」という一番便利な機能を会員壁の奥に隠す、インストールしたら 1GB 使ってバンドルソフトを三本おまけでつけてくる、そんなものばかりだ。阿祥が求めた三つのことは、どれも技術的に難しくない。「本来は無料であるべき、本来は使いやすくて当然なのに、わざわざ釣り針にされている」機能ばかりだ。 一括リネームは会員限定、一括書き出しは会員限定、広告を消すにはまず三回広告を見ろ。

これが私がずっと言ってきたことだ。「100 個のフリーソフトを作り直す」は 100 個の新しい売り文句を作ることではない。あなたが毎日使いながら、ずっと我慢してきたものを一つずつ、本来あるべき姿に作り直すことだ。 阿祥は私の選題リストを見たわけではないが、口を開いたらリストにあるべきものをちゃんと指してきた。

だから迷わなかった。「核心は一括処理ですね」と返したその勢いで、作り始めた。

作ったものは SoloPic という

数日後、公開した。SoloPic——無料・オフライン・約 12MB の一括画像ツール。アプリストアを探す必要も、インストールも不要。ポータブル版をダウンロードして解凍すれば即使える。中には GUI、コマンドライン、MCP Server の三つが揃っている。現在は Windows 版で、macOS と Linux は準備中だ。

阿祥が求めた三つのことは、一つ残らず実装した。しかも彼の言葉どおりに

一つ目、端からの一括トリミング。 これが一番言いたいところだ。世の中のトリミングツールはほぼ全部「全ての画像を同じサイズに切り揃える」ものだ。でも阿祥が求めたのはそれではなかった。彼が求めたのは端から切ること——各画像のサイズに関係なく、左から 100px、下から 57px を取り除く。画像ごとにサイズが違っても関係ない。

「端から固定ピクセル切る」なんて小さな話、なぜわざわざ取り上げるのかと思うかもしれない。既存ツールがなぜかうまく対応できていないリアルな場面に対応しているからだ。手元の画像の山を思い浮かべてほしい。スクリーンショットの束で、どれも上部に同じ高さのステータスバーが残っている。スキャン画像の山で、端に同じ幅の黒い余白がある。EC サイト用の商品画像セットで、右下の同じ位置に透かしが入っている。これらの画像はサイズがバラバラでも、切り取りたいのは「端から固定の一帯」であって「統一して 800×800 に揃える」ことではない。 「固定サイズに切り揃える」ツールで処理しようとすると、一枚ずつ手動で合わせるしかなく、数百枚なら半日潰れる。阿祥が「左 100、下 57」と具体的な数字まで出せたのは、明らかにこれで痛い目を見た経験があるからだ。だから「端から切る」機能をデフォルトで搭載し、サンプルの数値も彼の指定どおりにした。これは私が賢いのではなく、彼が痛点を正確に指差してくれたからだ。

二つ目、対応表ファイルによる一括リネーム。 「旧ファイル名,新ファイル名」を一行ずつ書いた対応表ファイルを用意すれば、SoloPic がそれを読み込んで一括で名前を変える。しかもプレビューを確認してから実行、間違えたら一発で元に戻せる。一括リネームで一番怖いのは、うっかりフォルダ丸ごとめちゃくちゃにして取り返しがつかなくなることだからだ。

三つ目、一括調整。 明るさ、コントラスト、彩度、シャープネス、グレースケール——スライダーを動かせば数百枚が一度に変わる。しかも左右分割でリアルタイムに前後比較できる。書き出してから「やりすぎた」と気づくのではなく、スライダーを動かしながら見て確認できる。これが一番平凡に聞こえるかもしれないが、多くのオンライン画像ツールが壁を作る場所でもある。1 枚だけなら好きに調整できる、でも「一括」になった瞬間、機能がなくなるか会員限定になる。阿祥がこれを入れてきたのは、現実の場面では画像は一枚ずつ来ないと分かっているからだ。

阿祥のコメントに「欻一下(シュッと一発で) 名前が変わる」という表現があった。この言葉がとても好きだ。「一括処理」の、ぜんぶ一気に片付く爽快感を見事に表している。だから SoloPic のトップページのキャッチコピーにそのまま使った。「一括画像処理、欻一下(シュッと一発)で完了。」 このコピーは私が考えたものではなく、阿祥の言葉だ。

あの数日間、実際に何をしていたか

一つのコメントからダウンロードできるソフトまで、あの数日間に何をしていたか気になる人もいるかもしれない。少し意外に思うかもしれないが——時間のほとんどはコードを書くことではなく、「自分が本当に何を作りたいか」を言葉にすることに使っていた。

たとえば「端から切るトリミング」。最初に AI に「一括トリミングを作って」と言ったら、一番ありきたりな「固定サイズに切り揃える」ものが出てきた。言い直す必要があった。統一サイズに揃えるのではなく、各画像の端から固定ピクセルを内側へ切る、四辺それぞれ個別に設定でき、サイズが不揃いでも正常に動く——と。三回目の修正でようやく手に馴染む感触になった。「対応表リネーム」も同じで、「プレビューしてから実行、一発で元に戻せる」をわざわざ付け加えた。自分の立場で考えたからだ。フォルダ丸ごとを一括リネームする気になるのは、間違えても戻せると分かっているときだけだ。 この一言は AI が代わりに考えてはくれない。「ユーザーが何を恐れるか」を知っている自分が出さなければいけないことだ。

あの数日間の本当の仕事は、一歩ずつ試すことだった——機能を言葉にする → AI に作らせる → 実際の画像の束で動かしてみる → おかしければどこがおかしいかをより正確に言い直す → 修正する。一気に全部書くのではなく、毎回一つの検証できる小さな塊だけ進める。この「言葉にする・小さく進む・実際に動かす」サイクルが、私がどのツールを作るときも日常的にやっていることだ。SoloPic だけが特別ではない。

彼が頼んでいないものを、もう一つ作った

コメント欄にはもう一件、もっと短い投稿があった。四文字だけ——「扫描全能王(CamScanner)」。

意図は分かった。CamScanner のような App は典型だ。スマートフォンで書類を撮ればスキャン画像に自動変換される、便利なのだが、高画質で書き出したい、透かしを消したい、広告を見たくないとなると、会員登録してくださいと言われる。その名前を投げてきたのは「これも、ちゃんとした無料版があるべきだ」という意味だった。

私は返した。「了解です、調べてみます。」

こうして SoloPic に四つ目の機能が加わった。阿祥は頼んでいないが、ついでに作った——スマート文書補正:スマートフォンで傾いて撮った、影のある書類を、ワンタップで綺麗なスキャン画像に変換する。影の除去、白背景化、文字の強調、自動角度補正。処理はミリ秒単位、オフライン、AI 大モデル不要。 これが「CamScanner を作り直す」への第一歩。まず一番必要な機能を入れた。

人だけでなく、AI にも使えるように作った

ここは少し言い添えたい——これが私の作るツールと普通のフリーソフトが違う点だ。

SoloPic は一つのコア、三つの使い方だ。

pic crop --left 100 --bottom 57 D:\photos
pic rename D:\photos --map list.txt -x
pic enhance --mode bw D:\scans

後者の二つをなぜ作るか。ずっと信じていることがあるからだ。これからソフトを使うのは人間だけではなく、AI でもある。 阿祥は GUI で手動操作する。画像処理を自動化フローに組み込みたい人は CLI を使う。Claude に話しかけることに慣れた人は、AI に直接やらせる。同じコアを誰でも使えてこそ、本当に使いやすいと言える。

「フリーソフト」としての原則についても、SoloPic は一本も破っていない。無料・MIT オープンソース・完全オフライン・通信なし・データ収集なし・広告なし・解凍すれば即使える。 あなたの画像はあなた自身のコンピュータで処理され、私は一切触れない。

この件で本当に腑に落ちたこと

SoloPic を作り終えて、一番の収穫はツールが一つ増えたことではなく、「100 個のフリーソフトを作り直す」について一つのことが腑に落ちたことだった。

この 100 個の題材、最高の出所は私の頭の中ではなく、あなたのコメント欄にある。

私一人が思いつけるフリーソフトの痛点には限りがある。しかも自分が毎日使っている種類に偏りがちだ。阿祥が求めた「端からのトリミング、対応表リネーム」は、正直なところ、私が日常的に思い浮かべる場面ではなかった。それは実際に大量の画像を処理している人が、既存ツールに長い間苦しめられた末にしか出せない、具体的な要望だ。 彼はコードを書かない。でも彼は誰よりもこのツールがどんな形であるべきかを分かっていた。

これはずっと私が言ってきたことだ。技術が分からないのは弱点ではない。「自分が本当に何を必要としているか」を明確に言葉にすることこそ、一番難しく、一番価値のあるステップだ。 阿祥のコメントは、見事に言葉になった要件だった。残りは AI に作らせる、数日の話だ。

視点を変えると、この件はじつは「プロダクトを作る」という仕事の分業を、根本からひっくり返している。以前は、実際のユーザーがどれだけはっきり要望を伝えても、大抵は無視された——「チームを集め、お金を使い、数ヶ月待つ」という壁が立ちはだかっていたから、誰もコメント欄の一件の投稿のために動きはしなかった。要望と完成品の間には、ほとんどの人が越えられない壁があった。 今、その壁が崩れた。阿祥は今も変わらずコードを書かない。私も大企業ではない。でも彼の一言の具体的な要望が、数日後には彼自身のコンピュータで動くソフトになった。この間から消えたのが、かつての壁そのものだ。

だから「100 個のフリーソフトを作り直す」は、私にとってどんどん一人のフラグではなく、題材をクラウドソーシングできることのように感じられている。みんなが一番どのフリーソフトがひどくて、一番作り直す必要があるか、よく知っている。私のほうは、言葉にしてもらった要望を、ちゃんとしたソフトに変える担当だ。

だから、注文を続けてほしい

6 個が 7 個になった。SoloPic は「100 個のフリーソフトを作り直す」を宣言してから、読者が直接リクエストして、そのまま作り上げた最初の一本だ。

この進め方を続けたいと思うようになった。あなたがコメント欄でリクエストして、私がここで作る。 コードが書けなくていい、技術が分からなくていい。阿祥のようにやるだけだ——あなたが一番ひどい目に遭ったフリーソフトのあの場面を、具体的に言葉にする。それが何というソフトで、何をしたくて、どこで詰まるか。

残りの 93 個、私一人ではこれだけの良い題材を揃えられない。

だからまた同じ問いを、今回は本気で聞く。あなたが毎日使っているフリーソフトの中で、一番誰かに作り直してほしいのはどれですか?要望を具体的に書いてもらえれば、次に作るのがそれかもしれない。

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